よく行政書士の内容証明郵便の作成代行HPで「あなたを刑事告訴します」という表現が文例として取り上げられています。しかし、こうした脅し文句の使い方は適切でない可能性があります。とくに、相手方を畏怖させ、告訴取り下げを条件に相手と有利に交渉を進めようというのは犯罪(脅迫・強要)行為に該当し、逆に相手方から告訴されるリスクを高めます(そもそも、行政書士が紛争性の高い事案に介入し解決を図るのは弁護士法72条に反するでしょう)。相手が法律家ならともかく、一般市民相手に「法的手段をとります」というのも際どい表現であり、専門職倫理に抵触すると考えます。

もっとも、相手がこちらを脅迫している、ストーキング行為を働いているなど犯罪性が認容されるような場合には、「これ以上迷惑行為を繰り返すなら告訴を検討します」などと警告し相手を強く制止することは認められるべきでしょう。相手に害悪を告知することが目的ではなく、犯罪的行為を抑止し自己の権利を守るという正当な事由があり、違法性が阻却されると考えられるからです。

*****
「告訴の意思がなく、またはその意思が不確定であるのに、ことさらに告訴すべきことを通知するのは、害悪の告知にほかならない。」(大判大3・12・1・刑録20-2303)

「他人を畏怖させる意思で、畏怖させるおそれのある害悪の通知をすれば、たとえ害悪の発生を望まず、またその他人に畏怖心を生じさせなかったとしても、脅迫罪が成立する」(大判大6年11月12日・刑録23-1195)

「他人から財物または財産上の利益を受ける権利のある者でも、その権利を実行する手段として、害悪の通知をすれば、脅迫罪の責任を免れない」(大判昭5・5・26・刑集9-342)